−その1−
参考図書:片岡寧豊著 「やまと 花萬葉」 (東方出版)
(ひらがなは万葉名、カタカナは現代名)

万葉の花については、万葉集の歌に出てくる花を現代植物に当てはめたもので、
どの花があてはまるのか様々な説があり、はっきりと定義づけられていないものもあります


はちす
(ハス)−スイレン科−
8/3神苑

ひさかたの雨も降らぬか蓮葉(はちすば)に
溜まれる水の玉に似たる見む
作者未詳



蓮の葉に溜まった水が玉のように光るのが見たいなと
酒宴の席で蓮の葉に盛った料理を見て作られた歌
夜明け前後に咲いて昼過ぎには閉じてしまう

なでしこ(カワラナデシコ)−ナデシコ科−
7/29神苑

我がやどのなでしこの花盛りなり
手折りて一目見せむ児もがも 
大伴家持 



秋の七草の一つ 「大和撫子」という言葉はこの花から
なでしこを見せてあげられるような娘がいたらいいのに・・

みら・くくみら(ニラ)−ユリ科−
8/20神苑


伎波都久(きはつく)の岡のくくみら我摘めど
籠(こ)にも満たなふ背なと摘まさね

作者未詳



一人でみらを摘んでも籠いっぱいにはならないけれど
あなたと一緒ならたくさん摘めますよ という歌意
くくみらは茎ニラのこと 漢方薬にも利用された

はまゆふ(ハマユウ)−ヒガンバナ科−
8/3神苑

み熊野の浦の浜木綿百恵なす
心は思へどただ逢わぬかも
柿本人麻呂



野の浦の浜木綿の重なり合う葉のようにあなたを思っている
早く逢いたいものだという恋の歌
花は甘い香りがする


おもひぐさ(ナンバンギセル)−ハマウツボ科−
2001:7/27神苑

道の辺の尾花が下の思ひ草
今更々に何か思はむ
作者未詳


今さら何を思うことがあるでしょう
あなたを信じ、頼りに思っていますという恋の歌
寄生植物で葉らしいものは見当たらない

おもいぐさ(リンドウ)−リンドウ科−
10/13神苑


「思い草」は「りんどう」とする説と、
「ナンバンギセル」とする説があります

日の当たる時だけ開花し、曇天や夜は閉じてしまう
根は「竜胆」といい苦い
苦味健胃剤として食欲不振や消化不良などに効果あり

をみなへし(オミナエシ)−オミナエシ科−
2001:7/19神苑

手に取れば袖さへにほふをみなへし
この白露に散らまく惜しも
作者不詳




秋の七草の一つ
「女郎花」は美女の中でなお美しい姿であるという意
白露で散ってしまう女郎花を惜しむ歌

 


ぬばたま
(ヒオウギ)−アヤメ科−
10/2神苑

佐保川の小石踏み渡りぬばたまの
黒馬(くろま)の来夜(くよ)は年にもあらぬか
坂上朗女

坂上郎女が恋人の藤原麻呂に送った情熱の歌
黒馬に乗って あなたが来る夜が一年中続いてくれたらいいのに
ぬばたまはヒオウギの種子のこと

あさがほ(キキョウ)−キキョウ科−
7/29神苑

朝顔は朝露負いて咲くといへど
夕影にこそ咲き増さりけれ
作者未詳


秋の七草の一つ
万葉集の「あさがほ」は桔梗であるというのが有力な説
夕方の光の中で咲き誇っている朝顔の花を見て詠んだ歌

あさがほ(ムクゲ)−アオイ科−
8/20神苑にて(043)

臥(こ)いまろひ恋ひは死ぬともいちしろく
色は出でじ朝顔の花
作者未詳

恋して死ぬことがあっても、顔には出すまい、朝顔の花のようにという歌意

あさがほは「桔梗」とする説と「ムクゲ」とする説がある
朝咲いた花が一日でしぼんでしまうので
はかない栄えのたとえに使われる

つちはり(メハジキ)シソ科−
7/29神苑

我がやどに生ふる土針心ゆも
思はぬ人の衣に摺らゆな

作者未詳 

 

心から思っていない人とはいっしょになるのではないよ

くれなゐ(ベニバナ)−キク科−
7/1神苑

紅の深染の衣色深く
染みにしかばか忘れかねつる
作者未詳

染料として使われていたくれなゐの花
染料のようにあなたのことが心にしみ込んでしまったという恋の歌
今ではベニバナ油があります(動脈硬化予防)


はぎ
(ハギ)−マメ科−
7/1般若寺

秋風は日に異(け)に吹きぬ高円の
野辺の秋萩散らまく惜しも
作者未詳

日増しに吹く秋風によって萩が散っていくのを惜しむ歌
花は年に2度咲くことがあり、「夏萩」とか「二度萩」とも呼ばれる
万葉集には萩が登場する歌が最も多い

 


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