ＫＩＭのベルギー桜便り　第六便

咲き始めた八重桜は　春の喜びを表すかのように　あっというまに７分咲きくらいになりました。(写真１７，１８，１９）　
ああ・・・去年　この八重桜を初めて見たときのことが　思い出されます。
初めての海外での生活に　不安と期待と・・・
けれど　この八重桜が咲いたとき、私は　ここに来たことを本当に嬉しく、幸せに感じました。
異国に咲く八重桜は　日本のものとは　趣が違いますが、この八重桜の咲く道を歩くとき、私だけでなく、通りがかりにすれ違う　言葉を異にするここの人々もやはり　嬉しそうな顔でゆっくりと　やさしげな表情でその美しさを楽しみながら歩いて行きます。
わたしと　同じように・・・。
いえ、わたしが　ここで　彼らと同じように　この桜を楽しんでいるのだと　気づきました。
そして　ここで何とかやっていけるのではないかと勇気が出たのです。

ＫＩＭのベルギー桜便り　第七便

もう満開かと思われた途端に　天候が崩れてきました。
去年　この八重桜は　５月の陽気とともに咲き始め　一週間あまりであっという間に　散ってしまいました。
激しい雨ではありませんが　しとしとと　冷たい雨・・・。
気温も１０度を下回り、朝は５度くらいの日も・・・。
せっかく咲いた桜も寒そうにうつむいてしまっています。
雨が降っていなくても曇り空。　どんより今にも降りそうな重たい雲。
雨とともにやってきた寒さが　どっかりと腰を下ろしてしまった感じです。
それでも　夕方から日没にかけて　雨があがると　つい嬉しくてデジカメを持ってお散歩・・・。
曇り空と　桜を撮ってみました。（写真２０、２１）
。。。。。
晴れる日が待たれる先週金曜日。
用事があり外出。遠くの雲の切れ間に　春の日差しを見つけ「今日こそ晴れるかしら
が、用事を済ませた帰り道　もうすぐ家に着くという時になって
なにやら急にあたりが暗くなってきた。
そして　　ゴロゴロ~・・・　雷鳴！！！
何とかぬれずに家についたものの　雷を連れてやってくる雨は　勢いよく、雨足は強い。　大粒の雨。
「・・・・。」
ああ・・・　これは　もう散ってしまうな・・・。
惜しむような気持ちで窓の外を眺める私の気持ちにおかまいなく無数の白い線を描くように　雨が降る。　　そしてまた雷の音・・・。
急に雨がやんだ。
真上の空は　まだ黒く厚い雲に覆われているのに、端のほうは　もう明るい　夕日が・・・。
明日　外に出たら前の道は桜の花びらの絨毯になっているのだろうか・・・。

ＫＩＭのベルギー桜便り　第八便

翌朝　気になる窓の外を見てみると・・・？？　白い・・・
窓を開けると　頬に冷たい空気が当たった。
寒い！　吐く息が白くなった。
朝もや・・・　　白くけむって遠くがぼんやりしている。
前の道の桜と靄で　幻想的な感じがする。（写真２２）
気になる道路を見てみた。桜の花びらは落ちてはいるが　まだ少ない・・・よかった。
＞＞＞
時間が経つにつれ　気温がぐんぐん上がり午後から　次第に晴れてきた！！
あの雷を合図に　ふたたび春の日差しと暖かさがもどってきたのだ。
夕方には　桜はもう嬉しげに　気持ちよさそうに空を仰いでいる。
＊＊＊　
翌日の日曜日。
朝から　素晴らしくいいお天気。絶好の花見日和だ・・・。

満開・・・！！

もう　これ以上はないというふうに　まさに満開。
この日を待っていた・・・そう思わせるような咲き姿に　思わず頬が緩む。
そして　この日を用意していたかのように　青い空と　お日様・・春の日差し、白い雲。
暖かい春の風が　笑いかけるように　わずかに私の頬をなでた。
葉は出始めの頃よりうんと大きくなり　色も薄いエビ茶色から　緑を濃くしている。
花は　それとは反対に　蕾まじりの濃淡のある色合いから全体が　やさしげな以前より淡いピンク色に。ふくよかな感じがする。
ベランダから見てみると（我が家は３階）　花見の散歩を楽しむ若いカップルや夫婦、家族連れがゆっくりと桜を仰ぎ見ながら通り過ぎていく。（ベランダから見た桜ー写真２３）
私も夫と外に出た。・・・満開の桜の下を　ゆっくり歩いてみる。
家の前の道は　そう広くはないので　道の両側に植えられた桜は　まるで桜の大きなトンネルのように互いに枝を伸ばし　空を覆うように　それはみごとに咲き華やいでいる。（写真２４、２５）
真下から見上げると　満開の八重桜は　豪華な桜の花のぼんぼりのように見える。
それが幾重にも重なってその空間に　立体感を醸し出している。
それらを眺めながら　ゆっくり歩く。　重なり合ったぼんぼりのさまが美しい。
あまりに花が多いので　せっかくの青空が見えないくらい・・・。
ああ、なんて・・・
春の陽気に包まれて　私も桜の気持ちになる・・・。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
☆やっと満開までたどり着きました。八重桜を楽しむ散歩は　これで終わりです。一緒に桜のお花見を楽しんでいただけたでしょうか？この満開の日は一昨日（２１日）のことです。

ＫＩＭのベルギー桜便り　最終便

ベルギーの八重桜、いかがでしたか。
なんとか　満開までお届けすることが出来、ほっとしています。
咲き始めてから急に寒くなったので　一週間くらい・・・と思っていたら　２週間以上かかってしまいました。
最初に　「ひょっとしたら　接木では？」という私の疑問は
この桜便りを読んでくださったかたから　情報をいただきました。

八重桜というのは　基本的に接ぎ木で増やすのだそうです。
八重桜は本来あるはずの雄しべが花びらに変異しているので　種ができない。それで，繁殖方法としては挿し木苗を作ってそれが早く大きくなるように根の活着のよい種類のサクラに接ぎ木するのだとか．．．。
そういうわけで　私の観察眼は正しかったと　褒めて（！？）いただきました。

私は　ずっとこのことを知りたいと思いながら　自分では調べませんでした。いつか　散歩のときに　ここに住んでいる人に聞けたらいいな・・・。そう思っていたんです。
でも　いつまでたってもフランス語は上手くならず・・・
それどころかその意欲さえ失ってしまった・・・。
去年　この八重桜を見て　不安よりも期待に胸がふくらんでとても嬉しく思った自分の気持ちを思うと　本当は　八重桜の蕾が膨らんできたときちょっぴりつらい気持ちになってしまったのです。
・・・八重桜が咲くということは　ここに来て一年が経つということ。
いろんな思いが　わたしのなかに　渦巻いてどうしたらいいのか　わからなくなっていました。私の中の変化は　美しい桜を素直に楽しむ心をどこかへおしやってしまいここで　美しい景色を見たり　日本にはない良さを感じるとき、私の気持ちは　なぜか不安定なものになってしまいます。　

日本でのわたしと　ここでのわたしは　違う・・・。
このことに気がついたのは　昨年の９．１１のテロ事件がきっかけですが・・・。
なにか衝撃的なことがあると　人は　それまで見えなかった自分の姿に気がついたりするものですね。　そんな感じでした。
その自分の変化を　ずっと受け入れられずにいる・・・。
・・・一緒に　八重桜を見てくれる人が　ほしかったのです。
桜便りは　そんなわたしの　ちょっとした試みでしたが　おかげで　デジカメを持って　この桜の下を通るのが　とても楽しく、満開の日を迎えるまで　本当にひとりではなく　みなさんと一緒に桜の散歩を楽しんでいる気がしました。

今回気がついたことですが　ここにはじつにいろんな種類の桜の木があるんです。これは最近聞いた話なのですが　その桜の多くは　もともとは日本から持ち込まれたものだとか。このことは　この桜便りをお届けしている途中で聞いたのですが　びっくりしました。

そして　もっとびっくりしたのは　
この八重桜。　私が　ずっと気になって・・・みなさんと楽しむことができた　この桜。
《le cerisier du japon》　「日本の桜」というのだそうです。仏語の先生から聞きました。私がデジカメを持って桜を撮っているとき、通りかかったベルギー人もそう言っていました。桜の名前（種類）なのか愛称なのかがわからないんですが・・・。
日本の桜だった・・・。
こんなにも　気になって　わたしのこころを　いっぱいにしてくれたこの桜は・・・

　　誰かに伝えたかった　この桜は・・・実は　「日本の桜」だったのです。

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